顔の脂肪吸引のダウンタイム
顔の脂肪吸引は、全身の中で最もダウンタイムが短い施術です。強い症状は約1週間。完成までは3ヶ月です。
ただし「顔」と一口に言っても、頬・顎下・メーラー・ジョールで経過が微妙に異なります。私は前職から数えて毎日2〜3件、顔の脂肪吸引を担当してきました。その経験から、部位ごとの実際の経過と、患者さんが不安になりやすいポイントをまとめます。
頬・顎下・メーラー・ジョール — 部位で何が違う?
頬の脂肪吸引
頬は顔の中でも脂肪が多い部位です。丸顔の原因になっていることが多く、吸引すると正面からの印象がかなり変わります。
腫れのピークは術後2〜3日。マスクをすればほぼ隠せる程度です。1週間で日常生活に支障のないレベルまで落ち着きます。
私の場合、頬の脂肪はかなり攻めてとります。「2回目の脂肪吸引はもう無理」というレベルまで吸引するのが目標です。ただし取りすぎてコケ顔になるのは当然NGなので、骨格や皮膚の厚みを見ながら調整します。ここの見極めが顔の脂肪吸引で一番難しいところであり、経験が出る部分です。
痩せている方でも頬に脂肪がついている方は珍しくありません。ダイエットしても顔の脂肪は落ちづらく、時間もかかります。先に脂肪吸引してしまう方が効率的なケースは多いです。限界まで吸引すれば痩せてからやっても痩せる前にやっても結果は変わりません。
顎下の脂肪吸引
横顔の印象を一番変えるのが顎下です。フェイスラインの輪郭がシャープになり、正面・横顔どちらからも変化がわかりやすい部位です。
横顔をきれいにしたいなら小顔注射でも糸リフトでも顎ヒアルロン酸でもなく、顎下脂肪吸引が最も効果的です。横顔がきれいに見えるかどうかは、鼻や顎よりも顎下のラインで決まることが多いです。
顎下だけで純脂肪40ccほど取れるケースもあります。量としてはかなり多い方で、これだけ取ると小顔効果は絶大です。術直後から大きな変化が見えてきます。
腫れは頬と同程度で1週間が目安です。ただし顎下は重力で体液が溜まりやすいため、むくみが頬より長引くことがあります。フェイスバンドの着用がここで特に重要になります。
メーラーファット
メーラーファットは頬骨の下にある脂肪の塊です。笑った時に頬がぷくっと盛り上がりすぎる方が対象になることが多い部位です。
術後の腫れ自体は頬や顎下より軽めです。ただし拘縮(皮膚が硬くなる治癒反応)が出やすい部位で、2週間〜1ヶ月は頬のあたりがゴリゴリした感触になることがあります。「表面が凸凹に見える」と不安になる方もいますが、3ヶ月かけて必ず柔らかくなっていきます。
ジョールファット
ジョールファットは口角の横から顎にかけての脂肪です。マリオネットライン(口角から顎に伸びるシワ)の原因になっている部位です。
ダウンタイムはメーラーと似た経過です。腫れは軽めですが、この部位は口を大きく開ける動作で痛みが出やすいです。食事の際に不便を感じる期間が3〜5日ほどあります。うどんやスープなど、大きく口を開けなくていいメニューを準備しておくと楽です。
フルフェイス脂肪吸引
頬・顎下の脂肪吸引と同時にメーラーやジョールも取る「フルフェイス脂肪吸引」を希望する方も増えています。同時施術の場合、ダウンタイムが倍になるわけではなく、頬単独の場合より2〜3日程度長く腫れが強く出る程度で済むことがほとんどです。
術後の経過 — 当日から3ヶ月後まで
当日〜3日目: 腫れのピーク
顔全体がむくんだような状態になります。実は、脂肪吸引の完成形は手術直後の状態に近いです。翌日以降に腫れてくるのでびっくりされる方もいますが、物理的に脂肪を取っているので元の顔より大きくなることはありません。
痛みは「大きな口を開けたり、触ると痛い」程度です。耐えられないほどではありません。処方する痛み止めで十分コントロールできます。
この時期、鏡を見て「腫れて太った?」と感じる方がとても多いです。これは麻酔液の残りとむくみが原因ですので、焦る必要はまったくありません。
4日〜1週間: 腫れが引き始める
腫れが引き始め、内出血が紫から黄色に変わっていく時期です。黄色くなるのは吸収されている証拠です。マスクをしていれば外出しても気づかれないレベルになります。抜糸もこの頃に行います。
2週間〜1ヶ月: 拘縮の時期
ここが一番不安になるタイミングです。皮膚が硬くつっぱる感覚が出てきます。触るとゴリゴリします。見た目も少しボコボコして見えることがあります。
「拘縮がきたんですが大丈夫ですか」というご相談をよくいただきます。まだ拘縮している期間であれば、今後改善してきます。骨格や皮膚のたるみが原因のケースもあるので、気になったらクリニックにご来院いただければ判断できます。
3ヶ月: 完成
拘縮が落ち着き、仕上がりのフェイスラインが現れます。「やってよかった」と思えるのはこの時期です。完成までは最低3ヶ月、気長にお待ちください。
フェイスバンドの正しい使い方
顔の脂肪吸引後にフェイスバンドを着用しないことは考えられません。
圧迫の目的は3つです。
- 出血と血腫を防ぐ — 吸引後の空間に血液や滲出液(しんしゅつえき:傷口からにじみ出る体液)が溜まるのを物理的に防ぎます
- 死腔(しくう)を減らす — 脂肪を取った後にできる皮膚と筋肉の間の空間を早く閉じさせます
- 浮腫をコントロールする — むくみの広がりを抑えます
着用スケジュールの目安は以下の通りです。
| 時期 | 着用の仕方 |
|---|---|
| 術後〜3日間 | 24時間着用 |
| 4日目〜1週間 | 就寝中を含む長時間 |
| 2週間〜1ヶ月 | 在宅時・就寝時 |
ただし、締めすぎると逆効果です。圧迫は仕上がりを細くするためではなく、回復をサポートするためのものです。
強すぎる圧迫は皮膚の血流を低下させ、リンパの還流を妨げ、神経を圧迫します。腫れが長引いたり、しびれが残ったりする原因になります。適度な圧でお使いください。装着の仕方はカウンセリングで実際に見せながらお伝えしています。
なお脚の圧迫着はフェイスバンドほどの圧がないので、顔ほど神経質になる必要はありません。
仕事復帰とメイクの目安
デスクワークの場合:翌日〜3日後
在宅勤務なら翌日から可能です。出社する場合もマスクで十分隠せます。金曜に施術して月曜から出社、というパターンが最も多いです。
接客・撮影がある仕事の場合:1〜2週間
人前に出る仕事の方は、内出血が消えるまで1〜2週間見ておくのが安心です。特にカメラ映りを気にする方は余裕を持ったスケジュールを組んでください。
メイクは抜糸後から
抜糸は術後約1週間です。それまでは傷口周辺のメイクは避けてください。抜糸が済めばコンシーラーで内出血をカバーできるので、見た目はかなり隠せます。ファンデーションも問題ありません。結婚式やイベントを控えている方は、最低1ヶ月前の施術をおすすめしています。
顔の脂肪吸引でコケることはないのか
取り方のコントロールが全てです。骨格・皮膚の厚み・年齢を見て吸引量を決めるので、いきなりゲッソリすることはありません。
ただし極端に痩せ型の方は頬のボリュームが減りすぎるリスクがあります。カウンセリングで適応を見極めることが大前提です。「コケたらどうしよう」と不安な方には、控えめに吸引して経過を見る方法もあります。無理に攻める必要はありません。
顔は痩せているけど二重アゴが気になる場合
正面から見ると小顔なのに、二重アゴだけ気になるというご相談をいただくことがあります。
原因は大きく2つです。皮膚のたるみか、骨格です。脂肪吸引で改善できるのは脂肪由来のボリュームだけです。皮膚がたるんでいる場合や、顎の骨格が後退しているケースでは、脂肪を取っても二重アゴの輪郭が残ることがあります。こういう場合は糸リフトの併用が有効です。
糸リフトとの併用
脂肪吸引だけでは理想のラインにならない場合、糸リフトを同時に行うことがあります。
フェイスラインや口横のぽにょっとした脂肪は、脂肪吸引単独よりも糸リフト併用の方が形が安定しやすいです。糸で皮膚と皮下組織を物理的に支え、位置を再配置できるからです。
また、顔の脂肪吸引時に糸リフトを入れると、皮膚を引き上げて癒着させる役割を果たします。ただしこれは同時に行った場合の話です。腫れが落ち着いてから後で糸を入れると、癒着の効果が落ちてしまいます。
併用を考えているなら、最初から同時に行うのがベストです。ダウンタイムは脂肪吸引単独と大きくは変わらず、1〜2日程度腫れが強く出る程度で済みます。
回復を早めるコツ
飲酒は1週間禁止
お酒は血流を一気に上げます。内出血の悪化、むくみの増悪、拘縮の長期化——全部アルコールが原因になり得ます。体の中全体が炎症モードの時にアルコールで炎症をあおるのは最悪です。ビール1杯でも避けてください。
強いマッサージは拘縮を悪化させる
「早くほぐした方がいい」と思う方が多いですが、術後すぐの強いマッサージは逆効果です。まだ組織が安定していない段階で強い刺激を与えると、内出血の拡大や回復の遅れにつながります。マッサージを始めていいタイミングは必ず検診で確認してください。
冷却・睡眠・栄養
- 冷却:術後3日間は冷やします。氷を直接当てず、タオルで包んでください
- 睡眠姿勢:頭を高くして寝てください。枕を1つ多く使う程度でOKです
- 食事:タンパク質(鶏肉・卵・豆腐)とビタミンCを意識的に摂ってください。体の修復材料になります
- 塩分を控える:塩分はむくみを悪化させます。術後1〜2週間は薄味を意識してください
まとめ
顔の脂肪吸引のダウンタイムは、強い症状で約1週間、完成までは3ヶ月です。全身の脂肪吸引の中で最も回復が早い部位です。
一番大事なのはフェイスバンドの正しい使い方と焦らないことです。圧迫しすぎず、緩すぎず。拘縮の時期に不安になっても、それは体が治っている証拠です。3ヶ月後にはきれいなフェイスラインが現れます。
2024年のメタアナリシス(29,368人対象)では、脂肪吸引全体の合併症率は2.62%と報告されています(Katz AJ et al., Aesthetic Surgery Journal, 2024)。安全性が高い施術ですが、ゼロではありません。だからこそ術後の過ごし方が大切です。
当院では部位ごとの経過やフェイスバンドの使い方まで、カウンセリングで具体的にお伝えしています。「自分の場合はどうなのか」が知りたい方は、LINEからお気軽にご相談ください。
※効果には個人差があります。施術のリスク・副作用については、カウンセリング時に詳しくご説明いたします。
参考文献
- Katz AJ et al. “Risks and Complications Rate in Liposuction: A Systematic Review and Meta-Analysis.” Aesthetic Surgery Journal, 2024.
- Rohrich RJ et al. “Optimizing Body Contour in Massive Weight Loss Patients.” Plastic and Reconstructive Surgery, 2020.
執筆:伊藤 優(京都大学医学部卒・美容外科医)